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|2007年1月23日|土屋政輝 博士 (慶應義塾大学 先端生命科学研究所)|
|題目|Systems Biology Approach to Understanding Activation of Innate Immune Systems:  Dynamic control of gene regulatory networks|
|あらまし|これまで, 遺伝子発現制御メカニズムを理解するのに, 転写因子の, 生化学反応(微分方程式モデル)からのアプローチ, 統計力学的なモデル, 転写機能の論理回路(combinatorial logic)モデル等, 様々な数理モデルが世界中の研究者達で考案された. だが, 遺伝子発現のメカニズムを解明し, 生体内での遺伝子発現の定量的動的コントールの成功には至っていない. 我々は, 転写因子の活性化が, シグナル伝達経路を通し, 化学修飾, 複合体の形成等, 様々に時間的変化を起こし, その結果として, 転写因子の機能に動的変化が起こり, 遺伝子発現をダイナミックに制御・調整している動的機構を解明する数理モデルを構築した.  具体的には, 転写因子によるプロモーター上のcis-DNA結合部位の活性化の時間的変化が遺伝子発現(mRNA)を動的に変化させると考え, 結合部位の活性化とmRNA発現量を共に離散化することで, 遺伝子発現レベルの遷移は, 転写因子群の結合部位の活性化レベルと遺伝子発現レベルで決まるとする有限オートマトン(Finite State Machine)を順次論理で表現(Sequential Logic Modeling, SLM)し, 遺伝子発現の動的制御機構の解明に成功した. 

-SLM は, 時系列な, 結合部位の活性化のデータとmRNA発現量を離散化することで, モデルを構築(non-parametric)することができ, これまで数理モデルに固有にあったパラメーターの最適化問題が存在しないことである. 
-これまで解析が困難であった, 転写因子の動的機能, 転写因子群の動的な相互作用関係を遺伝子発現の変化から解明することができるだけでなく, 転写因子群の時系列活性化に対する遺伝子発現の動的シミュレーション(Forward mapping), cis-DNA結合部位の変異による遺伝子発現の動的変化の予測(in silico Mutagenesis), 遺伝子発現の時間的変化から, 転写因子群の動的な活性化を予測(Reverse mapping)することが, 可能となった. 
-このことは, シグナル伝達経路とそれに特徴的に対応する転写因子群の活性化を解析することで, 遺伝子発現の時間的変化からシグナル伝達経路の活性化を予測することができること意味する. この動的制御システムを, endo16遺伝子によるウニの消化器官の発生モデルで立証した. 

遺伝子発現の動的制御機構を解明するSLMの特徴は, 網羅的に遺伝子発現を観測できるマイクロアレイデータの統計的解析から, 遺伝子間, 遺伝子クラスター間の因果相関(causality relation)を見出すことで, それらを動的にマップすることで, ネットワーク制御の動的メカニズムの解明に応用できる. 

現在, 生物学的応用として, Toll受容体(TLR)などを用いて病原体感染を認識し, 自然免疫に中心的な役割を果たしている樹状細胞の活性化過程における遺伝子発現の変化を網羅的にとらえ, 動的な免疫活性化のメカニズムを解明し, シミュレーションを可能にするシステム生物学的手法の開発に取り組んでいる.|

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